「俺は、助かったのか? いや、攫われたのか?」
目の前にいるのは、かなり怖い顔の男だが、悪人面というわけではなさそうだ。だが、一人で笑っている。これは……寝たふりをしていた方が良かったか?
「目を覚ましたか、坊主。いや……起こしちまったか! 悪いな。ちっと、うるさかったか」
男と目が合うと、怖い顔でニカッと笑った。
「う、うん……おきた。おじさんが助けてくれたの? あ、ありがと……」
一応、子どものふりをしなければ気味悪がられるだろう。とはいえ、人見知りで自分に自信がなくオドオドした性格だったし、元々、性格は子どもっぽい。話し方さえ気をつけていればいいか。
今まで寝ていたから忘れていたが、腹が「ぐぅーっ」と静まり返った部屋に大きく鳴り響いた。それと共に俺の顔が真っ赤になったのが分かった。
「あっははは……! そうか、そうか……安心したら、腹減ったか! 飯の心配なら要らんぞ、しかも肉は食い放題だぞ!」
怖い顔が緩み、優しい表情となって豪快に笑われた。
「むぅ……。ひどい……恥ずかしいのに! 聞こえなかったふりをしてくれても良いのにっ」
頬を膨らませて、布団をかぶった。
「いや、小さな体なのに、豪快に腹の虫が鳴ったもんで驚いてな! つい笑っちまった」
男がそう言うと、ギィーとドアを開ける音が聞こえた。不安になり布団から出ると、置いて行かれるのが怖くて男の服を掴み、一緒に外に出た。
窓から見える景色で、すでに夜だとは知っていたが、外に出ると漆黒の闇が広がり、近い距離の木でさえ見えないほどの闇に覆われているようだった。
「なんだ? どうした? 小便か?」
男が不思議そうな表情をして見下ろしてきた。
「ち、ちがう……」
小便? あぁ、外でするのか……。こういう田舎は初めてだが、親に連れて行ってもらったキャンプを思い出す。あの時もトイレは外だった。
「じゃあ、なんだ? あぁ……そうか……」
さっきまで馬鹿にしたようにニヤニヤと見ていた顔が悲しげな表情になり、気を利かせたつもりなのか黙った。
「まあ、なんだ……その、悪いことがあれば、良いこともあるさ! 人生、楽しんだもの勝ちだぞ!」
そう言いながら、かまどに消えていた薪に手をかざし、ブツブツと詠唱のようなことを呟くと、薪に勢いよく火が点いた。
あ、そっか……。子どもが山でうろついていれば、迷子とは思わないか。捨てられたと思って気を使ってくれたのか……って、その気遣いは嬉しいけど、魔法の方が気になって仕方がない! なにそれ!? 目を輝かせ、魔法を使った男の手を見つめた。
「……ねぇ、それ……なに? 今、なにしたの?」
オドオドとしながら、恥ずかしそうに聞いた。
「あぁー。肉入りのスープだぞ! 旨いし、いっぱいあるから遠慮すんなよ」
って、違うってば! スープも気になってたけど、魔法の方だよ! もう。
「ちがうっ。魔法の方……はじめて見た」
「そうなのか? お前の親……えっと、周りで魔法を使うヤツはいなかったのか?」
彼は俺を見ずに、木の棒で薪の調整をしながら尋ねた。薪の調整をすると、さらに火の勢いが強くなった。
メラメラと炎が燃え、周りが明るくなるが、森の木々には届かず、森は暗闇に覆われたままで不気味だった。
「うん。いなかった……。ねぇ……ボクにおしえて?」
男の服をギュッと引っ張りお願いした。
「構わんが、魔法はな……素質が無ければ使えんぞ。俺も、大した素質はないからな……生活魔法が限界だったな」
……マジかぁ。俺に素質があるのか不安になり俯いた。
「そんなに落ち込むことはないだろ!? 素質がないと言ってないぞ? 結果も分からんのに、落ち込むな!」
彼は俺の頬をムニムニとつまんで引っ張った。
「子どもの頬は気持ちいい柔らかさだな! 明日教えるからな。食ったら寝て体を休めておけよ、坊主」
そういえば、まだ自己紹介すらしてないじゃないか!? こういうのって、大人から聞いてくるものじゃないの? 「坊主」って呼ばれるとイラッとするからやめてほしい。ユウヤだけど……ユウで良いか。
「……坊主じゃない。ゆ、ユウって呼んで」
「ユウか、可愛い名だな。俺はトリスタンだ」
ガシガシと頭を撫でられた。……完全に子ども扱いですか。子どもですが……。
スープの入った鍋を持ち家の中に入ると、木のお椀にたっぷりと具が入ったスープとパンを用意してくれた。味は塩味で肉と野菜の旨みが出ていて素朴だが美味しい。パンは硬くて歯が折れそうだ……スープがなければ食べられない。
これでは足りないと思ったが、体が小さくなっているせいか、腹がはちきれそうなほどの量だった。
「苦しい……もう食べられないやぁ」
ニコニコしていると「ここで住むなら、自分が使ったものは片付けてから寝ろよ~」
「はーい」と返事をしたものの、どうやって片づけるんだ? 使った木のお椀とスプーンを持ち、キョロキョロしていると、布団で寝転がっていたトリスタンがニヤニヤしながら俺の行動を見守って微笑んでいた。
「それも、明日で良いぞ。こっちに来て寝ろ。朝早く起こすからな」
今さっき起きたばかりで、寝られるわけないだろう……と思ったが、満腹になったのと安心感で、知らないおじさんの隣で寝てしまった。
暗い中だったが、わずかな月明かりに照らされた、ぶかぶかの服を着たエリーが見えた。片方の肩が出たその姿は、かなり扇情的だった。自分の大きな服を、こんなにも美しい少女が着ていることに、ユウは胸が高鳴るのを感じた。 それに、服の下からはドロワーズという下着がはみ出して見えている。そのドロワーズには、小さなピンクのリボンが付いていて、それすらも可愛らしくて目に焼き付いた。「はい。……では、一緒に寝かせてください」とエリーが言ってきた。 エリーは恥ずかしそうに枕を抱え、ユウの布団に入ってきた。 え!? 布団ごと移動してくるんじゃないのか……? まさか、同じ布団で寝るつもりなのか? ユウは平静を装い言った。「隣に布団を持ってくればいいんじゃないか?」 しかし、エリーからは返事がない。 狭いので、隣に寝られたら柔らかな胸が当たるだろうし……エリーの体がどこもかしこも柔らかそうで、気になって寝られそうにない。 仕方なく、少し布団から出て隣で寝ようとした。だが、エリーに見つかると、腕を引っ張られて布団に戻され、寝かせられた。 エリーが、まるで母親が子供に接するような表情と口調で、「ユウさん、風邪をひいてしまいますよ。ちゃんとお布団で寝てくださいね」と心配してくれるのはありがたい。だが、女性に免疫がない俺にはハードルが高すぎる。 同じように布団から少し出て寝ることを繰り返していたら、しまいにはエリーに腕を組まれながら寝ることになってしまった。腕を組まれることで、エリーの柔らかな胸の感触が、さらに鮮明に伝わってくる。これじゃ気になって眠れない。 寝るのを諦めて隣で眠るエリーを見ると、さらに驚くことに彼女は自分の枕ではなく、俺の枕で寝ていた。彼女の顔はとても近く、月明かりの下でさえそのまつげが見えるほどに密着している。手を動かせば、その手の甲に当たる柔らかなお腹の感触が伝わってくるし……。 これ、ある意味、俺にとっては罰ゲームだぞ。隣で寝るエリーは不安で震えていたが、俺に抱きついて安心したのか、スヤスヤと寝息を立てて眠ってしまった。 どうせ寝られないのなら、こんなに間近で美少女の顔を見られる機会はないだろうと思い、月明かりに照らし出されたエリーの可愛い顔を見つめて癒やされていた。 ごそごそとエリーが動くと、さらに密着してきた。すると、俺の頬にエリーの頬がぴと
「俺は気にしないし、迷惑ではないぞ?」ユウは少しむきになった言い方で、エリーを安心させるように言った。 エリーはその言葉に少しだけ安心したように見えたが、まだわずかに不安げな表情を浮かべていた。「ありがとうございます。ですが、私は人に見つかるといけないので、表を歩けないのです」とエリーは事情を説明した。「なんだ、そんなことか。それは大丈夫だ。ここは森の中で、周りには誰もいないぞ?」とユウは優しく言った。 エリーはホッとした表情を浮かべ、「そうだったのですか……。安心しました。では、しばらくお世話になろうと思います。本当にありがとうございます」と再び感謝の気持ちを伝えた。「でも、外には猛獣がいるから、一人で外に出るなよ。死ぬからな」とユウは警告した。 エリーは少し驚いた表情を浮かべ、「え?……は、はい」と答えた。 驚いた様子だったが、先ほど猛獣に襲われた実体験があったのですぐに理解できたようだった。いろいろと話をしていると、外はすでに暗くなっていた。夕食を食べ終わり、エリーが嬉しそうな表情をしていた。「ん? どうした?」不思議そうな表情をして、ユウはエリーに尋ねた。「あのですね、わたし……普段は一人で食事をすることが多いので、話しながら食べるのが楽しくて、嬉しいんです」とエリーがとびきり可愛い笑顔で言ってきた。 エリーが美味しそうに食べるので、自分も自然と夕食が進んだ。 ユウはその言葉に少し驚いたが、すぐに微笑んで答えた。「そうか。俺もしばらく一人で食事をしていたから、その気持ちは理解できるな。話しながら食べるのは楽しいよな。これからは、毎日一緒に話しながら食べられるな!」 エリーはさらに嬉しそうに微笑んで、「はい、とても楽しみです」と答えた。エリーの微笑みに、ユウの心も温かくなった。 夜も遅くなったので夕食の片づけを始めると、エリーも手伝おうとしてきた。 いやいや……王女様だろ? こんなことをさせたらダメだ。というか、そもそも洗い物なんてできるのか?「いやいや……客人にお皿洗いなんてさせられないからな」とユウは言った。王女様と言うと、表情が暗くなる気がしたので、あえて「客人」と言い換えた。「私、客人なのですか? 違いますよ。私、居候の身になったのですから……お手伝いしますよ」と、エリーは少しムスッとした表情で可愛らしく言ってきた。
「俺は、王国とか王位とか分からないな。んー……何だそれ? 偉いってのは何となくわかるけどな」ユウは肩をすくめた。とっさに出た言葉だったが、これでごまかせると心の中で思った。「分からないのでしたら、気になさらないでください。大したことではありませんので……」エリーは、小さく可愛らしく笑った。 ん……? 普通ならば、大したことだと思うんだけどな。本人が気にしなくても良いと言うなら、このままの接し方でいこう、とユウは心の中で思った。「悪いな。こんな森の中の田舎育ちだから、教わらなかったんだ」とユウは苦笑いした。 そんな俺をエリーが見つめ、改めて座り直した。じっと俺を見つめて話し出した。「あ、あのぅ……実はですね。悪い者たちに何度も殺されかけて、逃げている途中で獣たちに襲われたのです。行くあてもないので……その、しばらくお世話になっても大丈夫でしょうか?」エリーは少し不安げに尋ねた。 内心は大喜びだった。送り届けなくて良くなり、しかもこんな美少女と一緒に過ごせるなんて……と心の中で思っていた。実際に話してみると、優しそうで気兼ねなく話せるし……なによりも可愛らしく、俺好みの女性だと思った。「問題はないけど、良い物は食えないぞ?」ユウは少し申し訳なさそうに答えた。王女様ならば、豪華な食事を食べているだろうし、頑張って作っても肉料理くらいしかない。しかも、作るのはシェフやコックではなく……俺だぞ。「大丈夫です。問題ありません」とエリーは、ホッと安心したように微笑んだ。 ユウが立ち上がり、「腹減っただろ? ちょっと用意をしてくるな」と言った。 エリーが申し訳なさそうな表情をした。「いえ、大丈夫です……」と言うが、小さく「キュゥー」と可愛らしい音がお腹から鳴り、顔を赤くして俯いた。 ユウは気にせずに家のドアから出て準備を始め、しばらくすると戻った。「今日は、獣の肉を焼いたのとパンとスープだ。これしかないぞ」とユウはテーブルに料理を並べながら言った。「大丈夫です。十分にご馳走です。ありがとうございます」とエリーは感謝の気持ちを込めて答え、食事が用意されたテーブルに座った。 小さな家なので、布団とテーブルの距離も近く、移動は簡単だった。「遠慮しなくても良いぞ。どんどん食べてくれ」と言った。そういえば、俺も父親との会話は最初こんな感じだったか。「は、はい
――予想外の出会い この世界に来てから、もちろん友達はいたことがない。当然だが、女の子を間近で見たこともなかったので、興味はあった。 歩くたびに背中にむにゅっとした柔らかな感触が伝わり、俺の肩越しに見える女の子の顔に、吐息すらも意識してしまい心臓が激しく脈打つ。肩越しに見える、桜色のぷるんとした唇に、さらに胸の鼓動が早まるのを感じた。 父親から「あまり人と関わらないようにな」と言われていたが、すでに家に着いていた。 改めて回復魔法で傷の手当てをして、俺の布団に寝かせている。この娘が起きた後、どうしよう……と後悔の念が押し寄せた。 なかなか目を覚まさないので、可愛らしい寝顔を眺めていると、背負っている時に背中に当たっていた胸のぷにゅっとした柔らかな感触が忘れられない。 興味は尽きないが、触るわけにはいかない。でも……見るだけならと思った。少し座る位置を変えると、切り裂かれたドレスの隙間から、白い肌にぴたりと沿う下着のような肌着が見えた。その肌着も破れていて、そこからまろやかな胸の膨らみがわずかに覗いていた。角度を変えると、あと少しで……ぷっくりとした膨らみが見えそう。じっと観察していると、不意に女の子が目を開けた。 気まずいな……忘れてしまおう。「ここは……どこでしょうか? 私は確か……」彼女は目を覚まし、寝たまま周囲を見渡し、布団の横に座っていたユウを見つめた。 見つめられたユウは、女の子に耐性がない上に、こんなにも美しい少女に見つめられ、恥ずかしさをこらえて答えた。「ここは俺の家だ」しかし、目のやり場に困り、そわそわして落ち着かない。「そうですか、私は獣たちに襲われてケガをして……」と寝たまま天井を見つめ、思い出そうと目を閉じていた。すると、何かを思い出したように表情を変え、自分の体を触り「あれ……!? え?」と本来なら痛みを感じるはずの体が、まったく痛まないことに驚きの表情を浮かべた。 驚いた表情の少女を見て、ユウは彼女が連れていた者たちのことや、彼女を家に連れてきた事情を説明しておいた方が良いだろうと思った。「ああ、護衛の兵士たちはみんな死んでたぞ。お前もケガして死にそうになっていたから、家に連れてきて治療した」とユウは淡々と説明した。 少女はその言葉に驚きと悲しみが交じった表情を浮かべ、「皆さん……死んでしまったんですね」と呟い
月日は流れ、俺は病気や大きな怪我もなく順調に育った。だが、10歳の時に父が病で亡くなった。トリスタンは俺を実の息子のように育ててくれ、武術、剣術、暗殺術、狩りの仕方など、生きるために必要なことを教えてくれた。 彼は最後まで俺を自分の子供として育ててくれた。出会った頃は幼かったが、転生者である俺には当時の記憶があり、血の繋がりがないことは知っていたが、その話は一切せず、俺からも聞くことはなかった。血が繋がっていなくても、この世界で俺を育ててくれた父は、ただ一人の育ての父だ。 10歳の頃には一人で猛獣を狩れるようになっていたので、食事に困ることはなかった。生活費は主に猛獣の素材や、力尽きた冒険者や兵士が残した武具を売って稼いでいた。 武具の調達は、自分の実力を知らずに猛獣が多く生息するこの森に入ってくる冒険者がいるおかげで、生活が豊かになっているようなものだった。猛獣が現れて危険だと言われているからこそ、名を上げるために自分の力量を知らないハンターがこの森に足を踏み入れ、猛獣に倒される。その遺品を回収し、必要な消耗品の剣は倉庫に保管していた。他の装備は町まで売りに行き、得たお金で森で調達できない塩や調味料などの調理器具を購入し、残ったお金は貯めていた。 このハンターたちの遺体から装備をもらう行為は、この世界では一般的で違法でも問題でもない。前世の世界では嫌がられそうだが、こちらの世界では、そもそも落ちていた物は発見者の物になる。前世のように警察と同じ役割の兵士たちに届けても、受け取った兵士が自分の物にしてしまうので、かえって怪しまれてしまう。それに、落とし物を管理する法律やシステムも存在しない。実際に装備品を売るお店でも、兵士やハンターの装備品を売っても怪しまれることはなく、買い取ってくれる。 買い取ってくれる理由はもう一つある。それは、王国軍の紋章が入った武具が悪用され、過去に度々事件が起きていたからだ。王国軍の紋章を利用し、貴族邸や商家を襲い、金品を差し押さえだと偽って強奪する事件があったのだ。そのため、放置していると問題だと考え、兵士たちの武具は他の武器と比べると高額で買い取ってくれる。階級が上がれば紋章が立派になり、高額で買い取られる。 亡くなった者は所有者ではなくなるため、装備品や所持品はもちろん、お金も発見者の物となるのが一般的だ。でも、前世
翌日から、俺としては余計なお世話だと思っていた剣術、武術、ナイフ術、暗殺術、狩りの仕方を教えてくれる日々が続いた。初めは嫌々習っていたが、この体は肉体の基本能力が異常に高く、面白いように体が動き、覚えも早くて楽しかった。気にして不安に思っていた魔法も適性があり、基本を教わると、勝手に実験をして狩りに取り入れたりもした。「ちゃんと毎日練習をしないと、いざという時に体が動かないからな!」「ボク、いつサボった? 楽しく練習してるよ?」 言われなくても、面白くて勝手に練習をして過ごしていた。体を動かすのが、こんなに楽しいなんて知らなかった!「少しは、親らしいことを言わせてくれ!」 トリスタンが頭を、いつものようにガシガシと撫でてくる。まだ1ヶ月も経っていないのに、俺たちは仲良く暮らしている。「でも、剣術は敵わないな……」 残念そうに言うと、トリスタンに大笑いされた。むぅ……大真面目に言ってるのにぃ~。「剣術を始めて1ヶ月の坊主が、数十年剣術をしてる者に剣術で勝てるわけないだろ。それに、体格も力も違うしな」「むぅ……明日は、お父さんに勝つ!」 あっ。思わず……「お父さん」って言っちゃったよ。トリスタン……気づいてる……? ゆっくりと振り向くと、ニターと微笑むトリスタンが俺を見つめていた。「さ、昼食にするか!」 また、余計な気遣いかな……? あまり、こういう話はしないんだけどね。親子関係とか……俺は、すでに父親だと思ってるけど。トリスタンも息子のように接してくれるし、怒ってもくれる。それに、この世界の常識をいろいろと教えてくれた。 お父さんと呼んだのがバレているし、喜んでいるトリスタンの表情を見てしまったので、この日を境にトリスタンをお父さんと呼ぶようになった。 ――衝撃の狩り 週に一度くらいのペースで狩りに同行し、狩りがどんなものか見せてくれた。俺が想像していた常識とはかけ離れていた。普通さ……弓とか遠距離の武器を使うじゃん? 魔法とかさ? なんで、剣術や暗殺術が得意なのに……拳!?「この辺りは、巨大イノシシの縄張りだから気を付けろよ。あいつらは縄張りに敏感だから気づかれたら襲ってくる。そこが良いんだがな! 探す手間が省けるしな。お前はここで気配を消して見学してろな」 そう言うと、スタスタと森のけもの道を歩き出した。 ガサゴソと音が大